妊娠糖尿病と診断された時の食事の注意点は?

糖尿病と聞くと年配の方がかかるイメージがあるが、妊婦さんがかかる妊娠糖尿病とは?
マタニティクリニックでの勤務経験もある管理栄養士の先生に妊娠糖尿病について聞いてきました。
【この記事の監修者】
管理栄養士 林美穂(はやし みほ)
福岡糖質制限クリニックで従事し、糖尿病や高度肥満の方へ栄養指導を行うなかで、現代の栄養学、医学の矛盾を痛感し薬よりも食事で病気が改善する事を実感する。
その後、糖質制限の名医である宗田マタニティクリニックで管理栄養士として勤務。これまでに2000人以上の栄養指導を実施。現在はフリーランスとして活動し、KETOS(ケトス)の監修や食の講座の講師として活躍している。
皆さんは、妊娠糖尿病という言葉を聞いたことがありますか?妊婦さんであれば、一度は聞いたことがあるかもしれません。ですが、管理法や正しい理解までできているか?と聞かれると少し怪しくなる方も多いかもしれませんね。
現在、日本人の1年間の出生数は約100万人前後であり、その中で妊娠糖尿病と診断される人は全体の12%と言われています。
そんな妊娠糖尿病ですが、言葉に「糖尿病」とついているので、年配の方や肥満の方が発症する糖尿病を想像しがちですが、一般的な糖尿病とは少し異なるところがあります。
血糖値を下げてくれるインスリンというホルモンの働きが妊娠した時にだけ弱くなり、妊娠中の時だけ血糖値が高くなる状態を妊娠糖尿病といいます。
産後はインスリンが働きももとにもどることがほとんどで、改善される場合が多いですが、妊娠糖尿病と診断されたあと、食生活が乱れた状態で放置してしまうとそのまま糖尿病になってしまうことがあります。
正しい妊娠糖尿病の理解として、本当の糖尿病の状態ではないものの、妊娠中に妊娠糖尿病が発覚しそのまま放置しておくと、将来本当の糖尿病になる確率が上がる糖尿病予備軍であることをまずは押さえておきましょう!!
妊娠糖尿病と診断された方は大きく落ち込みすぎず、普段の食事を見直す事でより良い健康な体を手に入れるきっかけをもらえたと前向きに捉え、これからの文章を読んでいただきたいと思っております。
具体的に妊娠糖尿病とは?
まず妊娠糖尿病とは、妊娠中に起きる糖代謝異常の状態を示します。
糖代謝異常と言っても分かりにくいため、簡単に言い換えると血糖値が上がった状態のままなかなか下がりにくい状態にあるということです。
血糖値とは、人間誰しも食事やストレス・運動などの影響によって上下変動を繰り返すのですが、妊娠中は特にホルモンバランスの乱れや血糖値を下げるインスリンというホルモンの働きが弱くなるため、血糖値が下がりにくい状態になってしまうのです。
なぜ、妊娠糖尿病になるの?
妊娠糖尿病と診断される人の特徴は、
①肥満体型
②糖尿病家系
③検査前に糖質オフをしていた
この3つに大きく分かれます。妊娠糖尿病とは血糖値が上がり、その血糖値が下がりにくい状態とお伝えしましたが、そもそも血糖値が上がる一番の原因は糖質の過剰摂取です!
また、肥満の原因や血糖値の上昇は、今まで脂質の摂取が原因と言われてきましたが、実はこれら二つの要因は精製された糖質の過剰摂取が深く関係しているのです。
そのため、肥満や糖尿病家系の人は日常的に糖質の摂取量が多いことが予想されるため、妊娠中も妊娠糖尿病を発症しやすい確率が高くなるということです。
また、最近の傾向としては健康を意識し糖質オフする方も中には増えてきました。糖質を制限すること自体は、健康的な妊娠生活を送るためにもとても良い事です。
しかし、娠糖尿病の検査を行う前には糖質制限を控えることをお勧めします。
その理由として一定期間、糖質オフをしていると血糖値を下げてくれるインスリンの分泌が減るため、妊娠糖尿病の検査として行う75gの糖負荷試験の際にインスリンの出が遅れ、普段よりも血糖値が急上昇し下がりにくい状態が続いてしまいます。
(75g糖負荷試験の飲み物)
その事から本当は、問題がなかった方でも一時的な数値だけを見て妊娠糖尿病と診断されてしまうことがあるのです。
このような事を防ぐためには、元々糖質オフをしていた方は糖負荷試験を行う三日程前には、1日約130g〜150gの糖質量を摂取した上で検査当日を迎えられると、正しい判断ができますのでお勧めします。
正常な状態にもかかわらず、上記のようなことが原因で誤った診断が下されてしまうと、妊娠糖尿病としての治療をすすめられるため注意が必要です。
糖質オフをした状態で糖負荷試験試験を受けた時の体の様子
一般的な治療の矛盾
妊娠糖尿病の一般的な治療として、カロリー制限・血糖測定・インスリン注射が妊娠糖尿病の度合いによって行われます。ですが、結論から申し上げてインスリン注射を使用しなくても食事管理のみで血糖コントロールは可能となってきます。
妊娠糖尿病の特徴として、インスリンの量はしっかり出ているのに下げる働きが弱い状態のため外部からインスリン注射を打ち、多少、量を増やしたとしても血糖値が大きく下がることはあまり期待はできません。むしろインスリン注射を始めていくと段々とインスリン注射を打つ量が増えることにより、体重の増加を招く恐れもあります
まず、大事なことは血糖値が上がりやすい食品を理解し、根本的な血糖値が上がりにくい食事を行うことです。
これまで、日本や世界ではカロリーが高いと血糖値が上がり、肥満の原因になると言われ続けてきました。
しかし、2004年米国糖尿病学会は本当の血糖値が上がる原因は「カロリーではなく、糖質の量で決まる!」と断言し始めたのです。
ですがまだまだ、日本ではこの考え方が広まらずカロリー制限を元に指導が行われているのが現状です。
ここで、実際に分かりやすい例をお見せします。
低カロリーのお弁当と、低糖質高たんぱくの食事を食べ比べした時、どちらが血糖値に影響を与えるのかを実際に実験した例です。
(低カロリーのお弁当を食べた時の血糖値の変動グラフ)
参照:宗田マタニティクリニックにて食事による血糖値変化の実験
(低糖質高タンパク食を食べた時の血糖値の変動グラフ)
この実験から分かるように、カロリーが高いから血糖値が上がるのではなく、糖質の量が多いか少ないかによって血糖値の上下変動が起きることが証明できるかと思います。
たんぱく質は多少血糖値に影響を与える場合もありますが、脂質に関しては実は一番、血糖値を上げない栄養素である事を押さえておきましょう!!
妊娠糖尿病を管理する正しい糖質オフの理解
妊娠中は、何より胎児に必要な栄養を摂取し意識する事が大切です。
赤ちゃんの成長に一番重要となるのは、たんぱく質・良質な脂質・ビタミン・ミネラルです。
今まで、胎児の主要なエネルギーは糖質と言われてきましたが、胎児は糖質と脂質の両方をエネルギーとして使うことができるため、ケトン体も多く作り出されます。
このケトン体ですが、今までは飢餓の象徴として、医療の世界では悪者扱いされてきました。ですが、ケトン体についての正しい理解としては、
糖質を制限した時に出現するケトン体は、脂質代謝がメインとなってエネルギーを作り出している結果なだけであり何も危険なことはありません。
私たち人間は、寝ている間や一時的に断食をしたとしても脳や心臓を動かして生きていけるのは、このケトン体が一番に働き体を動かす原動力となっているのです。
危険なケトン体の判断としては、1型糖尿病などの自己分泌のインスリンが全く出ていない方がケトン体と血糖値の両方が高くなった場合に、ケトアシドーシスを起こす危険性があります。
妊娠糖尿病の方や健康な妊婦さんが糖質オフをした時に出てくる尿中のケトン体ではケトアシドーシスを招く要因にはなりませんのでご安心ください。
また、糖質オフをすると、赤ちゃんの発育が悪くなるのでは?という意見も飛び交いますが、母親が糖質オフを行ったとしてもタンパク質や脂質が十分量摂取できていると、赤ちゃんは体を作る材料が揃うため支障なく成長していきますのでその点もご安心ください。
まとめますと、妊娠糖尿病を食事管理のみで行う方法は「糖質オフ」を基本とし、たんぱく質(最低でも約60g以上/日)・良質な油・野菜などをメインで摂取する食事を心がけていくことが、赤ちゃんもしっかり成長し母親自身の血糖コントロールも管理できるということです。
具体的なおすすめの食事のポイントは?
まず、食事を行う優先順位としてはたんぱく質の補充が第一です!!
イメージとしては、たんぱく質食材と野菜などをメインとしたおかずが中心となり、ご飯やパン・麺に関してはメインではなく付属のイメージを持ちましょう。1日の糖質量は、60g〜130gを目安とし、自分の体重増加量や血糖値の様子を見て糖質量を調整しましょう。
たんぱく質食材のお勧めは、動物性たんぱく質の卵・肉・魚の3つです。
この3つの食材は、アミノ酸の質が高い上に赤ちゃんの成長に必要なビタミン・ミネラルも同時に摂取することが可能となります。
次に良質な油としてお勧めなのが肉の油・ココナッツオイル・M C Tオイル・バター・動物性生クリーム・魚の油などです。何より脂質は脳の構成成分の一部であり、私たち人間の細胞を包む膜細胞膜の主成分です。
そのため、妊娠中に脂質が不足すると、肌荒れや皮膚疾患・様々な不調にも繋がりやすいことから、脂質は全てが悪者と捉えるのではなく避けたい油と積極的に摂取したい油を分けて判断することが大切となります。
一番に避けたいのは、菓子パンなどには必ずと言っていいほど入っているマーガリンやショートニングなどの油です。それと同時に、ブドウ糖果糖溶液や、人工甘味料、といった質の悪い糖質を控えることがまずは大切となります。
これらの記載があるものを全て排除することは、現代を生き抜く上では厳しい事もありますがまずは意識して出来るだけ控えることを心がけていきましょう。
最後に・・・
自分の日々の食生活を振り返り、今の自分に足りていない栄養素や過剰にとりすぎていた糖質があった場合は、まずは無理のない範囲からできることを見つけ日々の食生活に取り入れていくことが大切です。
元気に生まれてくる赤ちゃんと会えるのを楽しみに想像しながら、お母さん自身も日々の食生活を無理なく楽しみ、血糖管理を行えるコツを見つけていきましょう。
KETOS(ケトス)の紹介
妊娠中や産後は慣れない生活環境で健康的な食事をしたくても料理をつくることも一苦労だと思います。
そのような時は温めるだけで手軽に食べれる冷凍食のKETOSを利用することもオススメです。
KETOSはダイエットサポートフードとして販売されていますが、
しっかりとタンパク質や良質な脂質を含み、糖質管理も簡単にできるのでとてもオススメです。
この記事の監修者である林先生もKETOSの監修に携わり、妊婦さんの糖質制限の効果を多くの学会でも発表されている「宗田マタニティクリニック」の宗田院長も推薦されています。
KETSO(ケトス)公式ページはこちら
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